オガワの腹ん中。

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「SHARE」について考えた。

いつもよくしていただいている、篠崎誠監督の
(http://www.ai-ni-iku.com/ai-ni-iku/ep04/ep04_01.html)、
最新作『SHARING』の、最終試写を観てきました。

3.11以降の、まぎれもない私たちについての映画です。

「SHARING」。
本編でも語られる、深く静かな願いのキーワード。


あの日、私は映画美学校の事務局にいました。

今の地下フロアではなく、1階に受付とロビーと教室と、
あの懐かしい「カフェテオ」があった頃。

私は「昼番」のシフトで事務局入りしており、
特にすることもなくネットとかを見てたら、ぐらりと揺れて、
しかもどんどん長く大きくなってゆき、あわてて外へ出ると、
他のビルからも、たくさんの人があふれ出ていました。

何が起きたんだかまるでわからず、ただ、
携帯電話のアンテナ表示が、見たことのない紫色をしていたのを覚えています。

ちょうどこちらへ向かっている最中だった上司が、
生まれて間もない赤子を抱っこして現れました。

彼の奥さんもビガッコーで働いているので、
いつもは夫婦がビガッコー近辺で落ち合い、赤子を受け渡して、
奥さんは子連れで帰宅し、上司は出勤するのです。

親たちが外でこれからの何らかについて打ち合わせしている間、
なぜか私が、赤子番となりました。
気がついたらビガッコーのえらい人たちもそこここにいて、
おじさまたちは皆、見たことがないくらい柔らかい顔をして、
ぐるりと赤子を取り囲んで、顔をのぞき込んだのを覚えています。

普段あんまり言葉を交わすことのなかった、別の上司のひとりが言います。
「これくらいの頃は、まだあんまり周りが見えてないと思うよ」。
彼の家にも、幼いちびっ子がいるのでした。

赤子って最強。
一気に弛緩ムード。

そこから先はあっという間でした。
夜が来て、「帰宅難民」の皆さんが明かりを求めて押し寄せて、
上司たちは倉庫でホコリかぶってたアナログテレビを引っぱり出し、
椅子をたくさん並べたロビーの中央に、どん、と据えました。

私が座っていた受付席の、ちょうど真ん前、真正面でした。

同じ映像が、何回も何回も流れていました。
真っ黒い波しぶきが緑の田畑をじわじわと飲み込んでいく様。
炎を上げたままの家屋が濁流に押し流されている様。
波がそこまで迫っているのに、身動き取れずに渋滞している車の列。

出てくる順番を、覚えてしまいそうなくらいでした。

興味深いことに、NHKのアナウンサーは、
VTRの途中であれ何であれ、1時間かっきりで交代していくのでした。
その理由を私は後で、身を持って知るわけですが、

私の中でそれが起きたのは、夜を徹した明け方でした。
私の、ドキュメンタリー科在籍時の恩師がたまたまビガッコーで夜を過ごし、
帰り際、声をかけてくれたのです。

「オガワさん、そろそろ行くね」。
はあい、と顔を上げて彼女の顔を見た瞬間、
涙が、ぼろぼろぼろっ!と落ちました。

何が起きたんだかよくわかりませんでした。
こんなところで泣いちゃうほどの何かを、
私はまるで、被ってはいないのです。
なのに涙が止まらない。いやむしろしゃくりあげている。

そこから先の記憶は、どうも、飛び飛びです。

朝が来て、電車も動き出し、
誰もいなくなったロビーでお疲れ様をして、
職員一同は解散しました。

帰りの井の頭線からの景色を、私はたぶん忘れないと思います。
抜けるような青空。みんな誰かのもとへ帰っていく。
でも私はそうじゃない。自室で一人で、またニュースを見るのでしょう。

感受性を、閉じてしまった方が楽だと、その時、思ってしまいました。

『SHARING』に登場するのは、あの日以降、
感受性を閉じずに生きてきた人たちです。
すべてのアンテナを閉じて、目をそらして生きていくほうがずっと楽なのに、
それを選び取らなかった人たちの物語です。

彼ら彼女らは「分け合う」ことを試みます。
自分が見た景色を、心を、誰かと共にしようとします。
拒まれます。スルーされます。衝突もします。
決してうまくはいかない。だけど、
それでも彼ら彼女らは、そのトライをやめないのです。

目の下を土気色にしながら。
幾度も眠りから引き戻されながら。
皆、それぞれの「SHARE」を模索するのです。

もちろん、篠崎監督ご自身も。

皆さんは、どうですか。
あなたの感受性は、今も、ひらいていますか。

そういう話を、あなたとしたい。
いつか、何年経ってでも。そう思います。
https://twitter.com/sharing0401
http://sharing311.jimdo.com/



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by shibe0814 | 2016-03-31 00:37 | オガワの腹ん中

お疲れ気味のあなたのもとへ行き、足を揉んだり話を聞いたり、ちょっと元気になってもらう「旅する保健室」の小川志津子がいろいろと書いてます


by 小川志津子