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オガワの腹ん中。

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チチが生まれた日に。

今日、71歳になった人がいます。

チチが生まれた日に。_c0241437_1874371.jpg


オガワゲン。うちのチチです。
最近めっきり私のストレスのはけ口になっているかぎ針編みで、
まーーーっすぐ編んだだけの指なし手袋とネックウォーマーを、
送りつけたら返ってきたのがこの写真です。

油断してました。
泣いてしまった。

うちは、ひとりっ子核家族です。
チチとハハは、実はそんなに、仲良しじゃないです。
一緒に暮らしてたとき、普通に話してるとこあんまり見たことない。
晩ごはん食べながらつけてたクイズ番組みて、
したり顔で先に正解言っちゃうおとーさんと、
それが嫌でどんどんテンション下げてくおかーさんの間で、
あわあわ、うろうろ、話をつなげるのが私の役目でした。

ごはんが終わればおとーさんは部屋へ入っていき、
おかーさんはぷんすか怒りながら片付けをして、
私は、……私はどうしてたのかな。うまく思い出せません。

3人家族ですから、ふたりにそっぽを向かれてしまうと私は少数派です。
いつも一緒にいるのはおかーさんだから、私はおかーさんの話を聞きました。

おとーさんはね、結婚するときおじいちゃんに、
お仕事の国家資格を必ず取るって約束したの。
でも今ぜーんぜん勉強してないでしょ、おかーさん騙された。
しーちゃんが大きくなったら、おかーさんリコンするから、
一緒にしあわせになろう。

うん、とこたえる以外に何か方法があったろうか。

中学生の頃、そのことをチチに詰問した記憶があります。
おかーさんはこう言ってるけど、おとーさんとしてはどうなの。

チチは何も言わずに「それはおかーさんと俺が話すことだから」と、
部屋に入っていきました。

その後のことを私は知りません。

家を出て生活することを、止められたことはありません。
いやむしろハハの方から、外に部屋を借りなさいと提案されました。
おとなになる前に、ひとりで生活する練習をしなさい。そう言われました。

町田、王子、現在の杉並と、「ひとり時間」を重ねるうちに、
ふたりにとって私は「非現実から来る人」になっていきました。
私を迎える空気が、お客を迎えるときのそれになっていきました。

夫婦で過ごす時間のほうが「現実」。
そういうふうに、なっていきました。

むしろそれを望んでいました。
私が家を出て、自分で暮らすようになったら、
ようやく、ようやく向き合ってくれるんじゃないかと、
試すみたいな気持ちで家を出たのです。

決して平坦な道ではないようです。
でもその平坦じゃなさを、私が受けとめてしまったら、
すべては水の泡なのです。

ふたりは、今も一緒に暮らしています。
チチは今日カメラの前であんな顔をしており、
そのカメラのこちら側にいるであろう人は、たぶんハハです。

両方笑ってなきゃ、撮れないと思うんですこんな顔。

我が家は老々介護です。
いつかその日は必ずやってきます。
私はこちらに家族があるわけでもないから、
遠くない将来、たぶん帰るんだろうと思います。

……帰るったって電車で1時間強です。
どーしておめーは今帰ってこねーんだよ、
って思ってる親戚や旧友はたぶん複数います。

でもね、ごめん、この笑顔はね、
私がいたんじゃ、見られない笑顔なんです。

ムスメの私からしたら奇跡みたいな、
チチとハハのみによる笑顔なんです。

そのことの得難さを、まだもうちょっと、味わってたい。
そしてちっちゃい頃の私に言いたいんです。

あのふたり、わりと大丈夫だよって。

おとーさんおかーさんいつも元気でいてくれてありがとう。
また何か送りつけますから、笑ってね。
by shibe0814 | 2016-02-11 19:10 | オガワの腹ん中

お疲れ気味のあなたのもとへ行き、足を揉んだり話を聞いたり、ちょっと元気になってもらう「旅する保健室」の小川志津子がいろいろと書いてます


by 小川志津子